ポンコツ先生の自己満へそ曲がり国語教室(と年寄の冷や水)

中学校の国語や趣味に関する話題を中心に書いてます。

「少年の日の思い出」の思い出その⑥

前回の続きです。さて、山場である主人公とエーミールが対峙する場面で、90%の国語教師がするであろうQ3、『エーミールの言った「そうかそうか、つまり君はそんなやつなんだな。」の「そんなやつ」とはどんなやつという意味だと思うか?』に対するA3も、いろいろな回答が考えられます。ただし、ここで前回書いたA案(経緯や気持ちはつたえることができた)と、B案(僕がやったのだ、しか伝えられなかった)では、「そんなやつ」の意味合いが大変大きく違ってきますよね。

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A案であれば、「自分の個人的な気持ちを優先し、他人の大事なものを、事故とはいえつぶしてしまうような、身勝手でそそっかしい、チョウの扱いもちゃんとできないヤツ」くらいの意味になるでしょうか。もちろん、エーミールが主人公の言い訳を一応は聞いた、という前提ですが、でもこれならB案と比べればまだマシでしょう。

これに対しB案、つまり「理由も経緯も気持ちも伝えられなかった」としたら、これは一生トラウマ級の、最悪の状況になります。エーミールは、主人公がエーミールを困らせるために「ワザと」やったのだ、と思いますよね。しかもわざわざエーミールのところに、どんな様子だか見に来た、ということになってしまいます。この場合そんなヤツとは、「他人がさなぎから孵して大切にしているクジャクヤママユを、自分が手に入れられない腹いせに(※主人公のチョウ好きは周りのみんなが知っている)人目を盗んでこっそり人の部屋に入り、ワザと嫌がらせのために潰して逃げ、後で困っているエーミールの顔を図々しく見にくるようなヤツ」ということになります。

だとしたら、後日、学校の友だちに、「あいつは、昨日僕がいない隙を見計らってこっそり僕の部屋に忍び込んで、ワザとクジャクヤママユの標本を潰して逃げて、そのあと夜になってから、自分がやったと図々しくドヤ顔で言いにきたんだぜ。」とか広められたりしたかも知れません。潰したのは事実ですから、友達に言い訳をしようにも、あまり効果はなかったでしょう。ひょっとしたらその後孤立していった、なんてこともあるかも知れません。まぁそこまで想像を膨らませる必要はないかもしれませんが、この一件が彼の人生に大きな影響を与えたであろうことは想像に難くありません。現実の裁判でも、事故なのか、故意なのかによって、大きく刑期に違いが出ます。彼の場合、少なくとも同じ学校に通っている間、ずっとみんなから白眼視されていたかも知れません。

さらに言うならば、85%の国語教師がするであろうQ4「主人公はなぜ逆ギレしてエーミールの喉笛に飛びかかるところだったのか?」という問いに対しての回答もかなり違ってきます。エーミールの言葉のどこにキレたのか、については明らかに「君がチョウをどんなに扱っているかを知ることができたさ」の部分、自分が唯一プライドを持っている「チョウが好きで好きでたまらないこと」をバカにされたから逆ギレしたわけですが、A案の場合「自分では手に入れられないからって人から盗み、そのうえチョウの扱い方がすごく下手くそで潰してしまう」ことに逆ギレしたことになります。

それに対しB案の意味合いは「自分が手に入れられないからといって、他人が苦労して育てたチョウを、嫌がらせのためにワザと潰して平気な顔をしていて、チョウに愛情なんて全く持っていない、ただの物のとして扱っている」ことになると思います。言い換えれば主人公がキレた一番大きな理由は、「お前はチョウに愛情なんてこれっぽっちも持っていないんだろう!」と決めつけられたところではないでしょうか。

事故と故意では、これくらい受け取り方が違ってくると思います。そして故意に潰した、チョウに愛情を持たないヤツと決めつけられても、反駁の仕様がないまま家に帰ってきて、暗闇の中で自分のチョウを粉々にする時、どんな気持ちだったか。以前のブログ(その④)で、生徒の反応を大きく6つのパターンに分けてみましたが、その⑦として「そうだよどうせおれなんてチョウに愛情をもってない最低のヤツだよ、どうせどうせ!」と、やけくそになったヤサグレ型」もありうるかも。(②の逆ギレ型と似ていますが、ニュアンスがちょっと違います。ヤサグレ型だとその後不良少年になってしまうかもしれません。)とはいえ、改めて私としてはそのときの彼の気持ちとしては、その④で述べた⑥懺悔賠償型、を推したいと思うのです。なぜかというと、主人公の言動をよく見なおすと、「あってしかるべきなのに多分発せられていない一言」に気づくからです。その一言とは何だかお分かりでしょうか?次回はその一言について考えていきたいと思います。お暇でしたらまた見てやってください。どっとはらい