ポンコツ先生の自己満へそ曲がり国語教室と老害アウトドア

中学校の国語や趣味に関する話題を中心に書いてます。

「星の花が降るころに」についての考察その4

ご覧くださっているごく少数の皆様。お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。さて、いかにネタが少ないとはいえ、見え見えの引っ張りはこれくらいにして、いきなり本題に入ります。前回提示しました「星の花が振るころに」の中のこの表現、サッカーボールはぬい目が弱い。そこからほころびる。だから砂を落としてやらないとだめなんだ。使いたいときだけ使って、手入れをしないでいるのはだめなんだ。いつか戸部君がそう言っていたのを思い出した。」が暗示しているであろうこと。それはズバリ!

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「対人関係」のことでしょう!(あ~あ、言い切っちゃったよ。)この話の中の夏実と主人公の関係、つまり「小さな誤解やすれ違いを繰り返すうちに、何となく疎遠になってしまったこと」「それを何とかとりつくろおうとしてもうまくいかなかったこと」を、「サッカーボールの縫い目」で象徴しているのだと、「自己満へそ曲がり流」読解では考えます。つまりこう読み換えられるのではないか?と考えました。↓

「サッカーボールは縫い目が(=人間関係はもともと別々の人格が合わさっているのだからつながりが)弱い。そこから(=だから人間関係はちょっとしたことで)ほころびる。だから砂を落としてやらないと(=常にどんな状態か気をつけていないと)だめなんだ。使いたい時だけ使って、手入れをしないでいる(=自分の都合の良いときだけ友達関係を主張しようとする)のはだめなんだ。」

・・・どうでしょう?まぁ「こじつけだ!」と言われればそうかもしれませんが、いかにも作家先生が使いそうな暗示、隠喩じゃないですか?無くても話が通るのに、わざわざ内容に関係なさそうな記述を入れる理由はこれだと思い、生徒には「これって何かに似てないかい?」と投げかけています。(まぁこの投げかけですぐピンとくる生徒はほとんど、というか皆無だったかな?)結局は講義型の授業になってしまうんですけれど、これを中学1年から引き出すスキルは、残念ながら私にはありませんでした。みなさんはどうお考えですか?

私はよく教材の小説を一言で「〇〇がXXになる話」とまとめて終わることが多いのですが(「夏の葬列」は「心のわだかまりを軽減しようと思ったらむしろ倍になってしまった話」とまとめました。)この「星の花が振るころに」は、「二人で安全地帯にこもっていた主人公が一人で出て行く話」とまとめることができるかと思います。ところでこの話の時期は9月、つまり夏が終わり秋に向かうころの話ですが、ひょっとしたら「夏実と別れる」というのも「夏から脱却する」「夏の実が落ちて秋になる」ということの暗示なのではないでしょうか?・・・さすがにこの名前についての推論は「ゲリマンダー的」「我田引水」と言われますかね。でもまぁこういうくだらないことを、色々考えられるのが、国語という教科の懐の深さ面白さだと私は思っています。いいんですよ国語は、どんどん自由に発想しても。世界観がぶち壊しにさえならなければ。(イイノカネカッテニソンナコトイッテ)

で、このよくできた小説ですが、たった一カ所凡ミスがあり、これを例によって、今度は光村図書に電話したわけですが、反応は例によって、「参考にさせていただきます。上の者には伝えておきます。ツーツー。」でした。ただ、前回の2つと違って、今回の凡ミスは、生徒に何ページにあるかだけ伝えれば、結構多くの生徒があっさり見つけられる内容です。皆さんにもそのページ(見開き分)を載せておきますので、「凡ミス」を見つけてみてください。(※ただし、凡ミスとは言え、佐野洋的に言えば「これを裁判所で証言したら絶対負けますよ。」レベルの事柄です。)では読んでみてください。

 銀木犀の花は甘い香りで、白く小さな星の形をしている。そして雪が降るように音もなく落ちてくる。去年の秋、夏実と二人で木の真下に立ち、花が散るのを長いこと見上げていた。気がつくと、地面が白い星形でいっぱいになっていた。これじゃふめない、これじゃもう動けない、と夏実は幹に体を寄せ、二人で木に閉じ込められた、そう言って笑った。

 ──ガタン!
 びっくりした。去年のことをぼんやり思い出していたら、机にいきなり戸部君がぶつかってきた。戸部君は振り返ると、後ろの男子に向かってどなった。
「やめろよ。押すなよなあ。俺がわざとぶつかったみたいだろ。」
 自習時間が終わり、昼休みに入った教室はがやがやしていた。
 私は戸部君をにらんだ。
「なんか用?」
「宿題をきこうと思って来たんだよ。そしたらあいつらがいきなり押してきて。」
 戸部君はサッカー部のだれかといつもふざけてじゃれ合っている。そしてちょっとしたこづき合いが高じてすぐに本気のけんかになる。わけがわからない。
 塾のプリントを、戸部君は私の前に差し出した。
「この問題わかんねえんだよ。『あたかも』という言葉を使って文章を作りなさい、だって。おまえ得意だろ、こういうの。」
 私だってわからない。いっしょだった小学生のころからわからないままだ。なんで戸部君はいつも私にからんでくるのか。なんで同じ塾に入ってくるのか。なんでサッカー部なのに先輩のように格好よくないのか。
「わかんないよ。そんなの自分で考えなよ。」
 隣の教室の授業も終わったらしく、椅子を引く音がガタガタと聞こえてきた。私は戸部君を押しのけるようにして立ち上がると廊下に向かった。

 

・・・もう皆さんおわかりだと思いますが、一応答えは次回にさせていただきます。「結局引っ張るのかよ!」とお思いでしょうが、教科書や国語の授業だけに限定すると、そうそうネタはないのですよ。それではまた次回、よろしければ見てください。