ポンコツ先生の自己満へそ曲がり国語教室

(高校受験には全く役に立たない)中学校の国語に関する話題を中心に書いてます。

教科書会社に電話した話その5

前回の続きです。『「新しい博物学」の時代』の中の表記に引っ掛かりを感じた私は、以前書きました「卵」から数年後、また教科書会社に電話をしてみました。ただし、今回の電話は正直「ツッコミを入れるのは野暮な内容」であることは重々承知の上でした。専門家である筆者は絶対に分かっているはずなのに、あえてドラマチックな展開にするために、そのような表記にしたんだろうな、と想像しつつも、どうしてもツッコまずにはいられなかったのは、私の性格の悪さが如実に現れた結果だと自認しています。さて、私が引っかかった表記は以下の部分です。

「定家の記録と最新の技術とを合わせることによって、超新星爆発が起こった年が一〇五四年というように決定できたのです。」

いかかでしょうか。文章全体でも一番盛り上がる箇所なので、逆に私は強く引っ掛かりを感じました。「かに座の超新星爆発が、地球上で目撃されて、明月記で記録されたのが一〇五四年なので、この年に超新星爆発が起こった」という内容ですよね。ところで、かに座はどこにあるかというと、ウィキによれば地球から「7000光年」離れているとのこと。・・・もうお分かりですね。「7000光年ということは、光の速度で7000年かかる距離である。だとしたら、地球上で一〇五四年に目撃されたのならば、実際の爆発は「それよりも7000年前」だということ。野暮を承知でさらに言うならば、7000光年はおよそ、であり、おそらく数年、下手したら数十年くらいは『誤差の内』になるだろう。だとしたら『超新星爆発が起こった年は一〇五四年』という表記はおかしいのではないか?」と、こう電話してみたわけです。・・・はい、お読みいただいている皆様はきっと、あまりの野暮なツッコミにドン引きなさってますね。だいいち、「超新星爆発が起こったのは一〇五四年からおおよそ7000年くらい前と決定できた。」では、盛り上がりもへったくれもあったもんじゃないですよね。

この電話に応対してくれた会社の方の対応は、細かくは覚えていませんが「厳密に言えば確かにそうなんですがゴニョゴニョ」といった感じでした。そしてお決まりの「担当者に伝えておきます。ご指摘ありがとうございます。」という感じでオシマイ。(そして案の定、謝礼の話は出ませんでした。多分都市伝説なんでしょうね。)

当然ですが私は、定家の「明月記」の、記述の重要性や貴重性を否定するつもりは毛頭ありません。それに、古人の営みを現代科学に結びつける考え方、ものの見方は面白いし素晴らしいと思っています。ただ、恐らくこの記述は、ちょっと天体に関する知識を持っている中学生なら、私と同じような引っ掛かりを感じる子がいるんじゃないかとも思ったのです。(私自身は、高校時代物理や化学で赤点を食らっていたレベルの、全く理系オンチですが、そんな私でも「おや?」と思うのですから。)

長い教師生活の中で、教科書会社に入れた電話は3回です。またいずれ、3回目の電話の内容について書かせていただきます。次回は「星の花が降るころに」についての小ネタを。(実は3回目の電話は、この「星の花が〜」についてのものだったのですが、教科書をお持ちの方は、もう一度読み直してみてください。「あれ?」と思うところがありますから。)それではまた。

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ヤマトは14万8千光年を約1年で往復したわけですが。